63番 吉祥寺
石鎚山(27日目) (2003/4/8)
宿(5:10)→横峰寺(60)→香園寺(61)→宝寿寺(62)→吉祥寺(63)→前神寺(64)→宿(16:00) 39.1km34.1km
今日は石鎚山が見えたら横峯寺の奥にある石鎚神社の遥拝殿まで足を伸ばそうと早立ちを考えていた。
夜のうちに宿の人に朝飯の時間を確認すると
「うちはいつ出発してもいいですよ。ただご飯やお汁は自分でよそってもらうけど」 と簡単に請け負った。
それならと5時前に準備を整えて食堂へ行くと誰も居ない。だが食卓には茶碗や箸、おかずの卵と海苔もある。
それに頼んでおいた昼飯の包みも置いてある。
ジャーには温かいご飯が、味噌汁も大きいポットに入っていて温かい。
これならお遍路さんも簡単でいいし、宿も楽で良いだろう。
中々良いシステムだ。他の宿もこのシステムを採用すればお互いに楽なのに。
国道を横切り横峰寺に続く車道は見覚えがあった。去年車で来たとき走った道だ。
カーナビを横峰寺に設定すると、この道を表示した。
しかし車で走っていて不安になってきた。遍路札は見えたが道路標識に横峰寺が無い。
仕方がなくやっと出会った人に聞くと
「この道はこの先で終点です。車ならこの道でなく山の裏側の道だ」 と教えてくれた。
今その道を歩いている。(そうそうここで道を聞いたのだ)と道を聞いた場所まで思い出した。
そこから少し歩くと車道は突然終わっていた。そこには車が何台か止まっていて、水を汲んでいる人がいる。
休憩場所もあったので一休みしながら、宿で入れた水道水をここの水と入れ替えていると、車で来た人が話しかけてきた。
「この水は美味しいですよ。西条からも汲みに来る人が居る。」 だが西条がどこか分からない。
「今日は休みではないのにお遍路さんが結構歩いていた。貴方の後ろにもいましたよ。」
エー若しかして昨日の人が。慌てて出発することにする。
今の人はお遍路が結構歩いていたと言っていたが、実際こうして歩いていると、お遍路さんに会うことは少ない。
出発する時間が違うと同じような速度歩いていれば決して会うことは無い。
極端に遅い人とか早い人が、追い抜いたり追い抜かれたりするぐらいだ。
現に今日もまだ一人のお遍路さんに会っていない。結局水場から山道入って横峰寺に着くまで一人の遍路にも会わなかった。
遠くの山が見えない。曇っているが雲で見えなのではなく、春霞なのか黄砂なのか近くの山は見えるが遠くは全然見えない。
これでは遥拝殿からも石鎚山は見えないだろう。行くべきか止めるべきか迷いながら歩く。
何故石鎚山を見る事にこだわるかと言うと、昨年の車遍路のとき札所以外にも剣山と石鎚山に登った。
剣山の山頂は名前とは大違いで、なだらかな岡のような草原の山だった。
しかし石鎚山は違った。
南国四国で4月中旬、しかも2千Mに満たない山なのだからと、軽く考え予備知識も無く向かったのだが。
まず土小屋コースの国民宿舎で脅かされた。
今日登った人が 「雪が多い」 と言って途中で引き返してきたと言う。
標高の同じような剣岳には雪はなかったのに、石鎚山では雪があると言う。
山の装備といっても小型のザックとキャラバンシューズを持っているだけなので、少々不安だが、無理ならそこから
引き返せば良いと決断し国民宿舎に泊まった。
雪は石鎚山頂直下の沢の斜面をトラバスする辺りから多くなってきたが歩くには支障はない。
しかしその斜面は雪崩や落石でも起きそうな雰囲気があり、早朝の今はいいが日が昇った帰りが心配になる。
表口と合流した所に鎖場があった。
鎖があるならいいだろうと挑戦したのだが、岩の一部は凍っており、鎖は氷のように冷たい。
登り始めて早速滑ってしまい、手を鎖と岩の間にはさんで指の皮をすりむいてしまった。
怪我ほどでもないが恐怖心が湧いてしまい、途中何度も何度も溜息をつきながら休まざるを得なかった。
今は私一人なので時間がかかっても問題ないが、最盛期だったら渋滞の原因となってしまっただろう。
何とか一つの鎖場が終わったのだが、まだ鎖場が続くらしい。
嫌々といった感じで入口に行くと、ロープが張られ立て札に「冬季立入禁止」と書いてあった。アー助かった。
山頂に着くと瘠尾根の先にもう一つのピークが見えた。向こうのピークの方が、ここより高そうに見える。
でも幸か不幸か瘠尾根の入口は頑丈に封鎖され 「崩壊の恐れのため立入禁止」 となっている。
これで臆病風に吹かれて止めたのではなく、立入禁止だったから残念ながら止めたのだと言い訳が出来る。
と見栄っ張りの私は考えていた。
と、まあこんな訳であの石鎚山を、もう一度眺めたかったのだが見えないのでは仕方がない。
遥拝殿に行くのは諦めよう。
横峰寺に着くと縁側で休んでいた人に
「宇和島で会ったお遍路さん」 と声を掛けられた。
エッと驚いて見ると、あの交通機関を利用しながら遍路をしているご夫婦だった。
昨日は61番香園寺の宿坊に泊まり、そこから歩いてきたのだと言う。
歩きの遍路さんとの再会はないのに、この人たちとはこれで3回も会った。
「次は何処で会うのか楽しみですね」 と言って分かれたが本当に楽しみが増えた。
香園寺への下りの道は快調に飛ばした。
途中今日の宿をまだ決めてないので本を取り出し検討すると、64番の先に石鎚温泉と湯之谷温泉に宿があった。
どちらにするか迷ったが石鎚温泉より先にある湯之谷温泉に泊まることにする。
久しぶりの温泉が楽しみだ。
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