50番 繁多寺
歩道山脈(24日目) (2003/4/5)
宿(6:30)→浄瑠璃寺(46)→八坂寺(47)→西林寺(48)→浄土寺(49)→繁多寺(50)→石手寺(51)→宿(16:00) 34.1km
朝の出発のとき宿の人から 「お接待です」 と言って大福餅を貰う。
今日は久万町が主催のお遍路さんを接待する日とかで、道路脇ではテントの設営も始まっていた。
早出の遍路には支度が間に合わないので、宿で接待してくれたのだ。
更に嬉しかったのは部屋の料金表には6500円と書かれていた宿泊料を、歩きのお遍路さんは6千円でいいと言ってくれた。
今日の行程は久万町高野の千本峠の山道を越えて、あとは車道を松山の道後温泉まで行く予定だ。
道後温泉では本館の温泉に入りたいので、宿はまだ決めてない。ホテルも沢山有る事だし何とかなるだろう。
それにしても今日一日で46番から51番まで6札所も打つことになる。
昨日中札所を打って残り44と思っていたのに、今日は一編に37になってしまう。
それなのに嬉しい気持ちは全然なく淋しいと云うか、なんとなく惜しい気持ちがする。
これから後は札所の数が日々減るのみか。
久万町高野では静岡の真冬を味わった。
森の中の山道を出ると辺り一面真っ白な冬景色。昨日の昼から天気が回復して今日は快晴。その放射冷却で
冷え込みが増して季節はずれの霜となったらしい。
霜を手で集めれば団子が出来る。あれこれは若しかして雪?よく分からない------。
田んぼには氷が張っているし、畑には霜柱も立っている。
私の住む静岡県中部地方は雪は殆ど降らない。
風花が舞っただけで子供は 「雪だ!雪だ!」 と大騒ぎする程だ。
まして霜柱などここ数年見たことも無い。この景色はまさしく真冬。今年の4月5日は冬でした。
舗装された道路の隅の歩道には、白線で区切られているだけの所や、縁石でガードされている所、歩道を一段
高く盛上げてある所と色々ある。
遍路にとって一番厄介な奴は、この一段高く盛り上げてある歩道である。
盛上げた部分が長く続いているなら良いが、家の玄関や車庫、脇道の入口といたる所で盛上げ部分が低くなり、
道の高さに戻る。これらが過ぎるとまた盛上げてある。10歩くと下がり5歩くと上る。
この繰り返しに膝が諤々となり、歩くテンポが掴めず調子がでない。
仕方なく前に車が見えないと平らな車道を歩き、車が見えると慌てて歩道に戻ったりするので余計疲れてしまう。
45番岩谷寺から46番に向かう国道33号の三坂峠への上り坂は、この盛上げ式の歩道が延々と続いている。
峠の方向を見上げると歩道の上り下りがまるで山脈のように続いているのが見える。
甲子園の応援席をアルプス席と言うなら、ここは間違いなく山脈だ。
そう 「歩道山脈」 だ。と疲れている割にはいい命名だと一人悦に入りながら歩く。
それにしてもと------歩く事と考える事しか出来ないので、思いはだんだん攻撃的になってくる。
建設省だか国道事務所だか知らないが、何故こんな歩道を作るのだ。
歩道を盛上げれば砂利もセメントも必要になり金も手間もかかる、工期は長くなり住民への迷惑も長くなる。
なぜ縁石でガードしただけの歩道ではいけないのか。
仮に自動車が歩道に乗り上げたとき、盛り上げ方式では車は、そのまま走ってしまいかねない。
これが縁石のガード方式なら車は一度縁石に乗り上げてから落ちるので、車体が縁石に乗り上げたままタイヤは
空回りをして車は進めなくなるのではないか。
こんな盛上げ式歩道の設計者と許可を与えた上司は処罰ものだ。罰として歩き遍路を命ずれば、二度とこんな
歩道は作らないだろう。
ウー待てヨ 歩き遍路が罰なら、喜んで罰に服する者が出てきて盛上げ式の歩道は無くならないかも知れないな。
妄想と歩道山脈は延々と続く。
46番浄瑠璃寺の納経所で気持ちの良い応対をしてもらった。
昨日納経所の悪口を言い過ぎた罪滅ぼしで書くわけではないが、今までの納経所の中で一番気持ちよかった。
(結局88ヶ所の中でここが一番良かった)
46番の納経所では若い僧が一人で遍路に対応しているのだが、納経するお遍路さん一人一人に必ず声を掛けて
対応してくれていた。私には 「歩きのお遍路は大変ですね。今日は何処まで行く予定ですか」 と聞いてくれた。
「道後温泉まで行きたいと思っていますが、いい宿はありませんかネ」 と聞くと
「最近では何処でもお遍路さんも泊めてくれますので、道後温泉には一杯あるでしょう」 と軽くいなされてしまった。
しかしお遍路さんもの 「も」 が気になった。
昔は遍路装束では泊めない宿があったと云うことだろう。急に今日の宿が気になりだした。
それはともかく、この様に何か一言話し掛けてくれるだけで、受ける側の気分は良くなり疲れが軽くなるような気も
してくる。一番札所の悪口ばかり言っているお坊さん、折角喋るのだから相手を思いやる気持ちで話掛ければ、
きっとお互いに気持ちよくなりますよ。
50番繁多寺の境内ではパン屋のお接待を受けた。
実はここのお接待は去年の車の遍路の時も受けていた。その時は遍路の格好をしてなかったのにもかかわらず、
お接待を受けて感激した事を思い出した。
一過性のお接待だって有難いのに、こうした継続的なお接待を続けているパン屋さんに、多くの遍路が感謝した
ことでしょう。遍路の感謝がこのパン屋さんの繁盛につながることを願っています。
朝歩いた久万町高野の桜は、蕾の状態で一輪も開花していなかった。それが松山に入ると春爛漫!桜は満開、
桃やスモモも咲き誇り、赤い椿と一緒に黄色のレンギョの花も咲いている。
この辺りは椿が愛好されているのか、どの家の庭にも園芸用の椿が植えられている。
花弁に細かい粒々が入ったものや、花弁の色がそれぞれ違うものなど色々目に付いた。
道後温泉に着いた。周りは観光客らしき人ばかりで遍路姿は私一人。何かジロジロ見られるような気がして
落ち着かない。これではとても温泉に入る事は出来ないと早々に逃げ出し宿を探した。
しかし道後温泉本館の温泉にはどうしても入りたいので、本館の近くの旅館に入り料金を確認する。
このような時は遍路の格好は都合が良い。何も言わなくても安い部屋にしてくれるし、ぼられる心配も無い。
案の定1泊2食で7500円でいいとの事なのでその宿に決めて、早速道後温泉本館に向かった。
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