Quantcast
Channel: はぐれ遍路のひとりごと
Viewing all articles
Browse latest Browse all 482

四国遍路20日目

$
0
0
                  歩き方(20日目) (2003/4/1)

 宿(6:50)→宿(14:50)              30.2km

 宿の横が郵便局だったので家への3回目の便りを投函した。
家では妻が一人で居るのだが、きっと 「亭主元気で留守がいい」 と楽しく暮らしているだろう
・・・・・・・・・・・・と思うしかない。

 ここは愛媛県内海村の柏と云う所だが、昨日は雨でガスっていたため山も海も
景色ははっきり見えなかった。
今日は雨はやんだが、まだ今にも降り出しそうな雲が空一面に広がっている。

ここの海は高知県の横波三里と同じく、これが海?と言うくらい波が無い。
山側には所々に山桜が咲き目を楽しませてくれる。
また棚田の跡なのか段々畑に雑木が生えているのがあちこちに見える。

静岡でもそうだが先祖が山を開拓して、みかん畑や茶畑を作りケーブルやモノラックまで設置したのに、今では
採算が合わないのか放置されている所が多くある。
せっかく先祖の汗の結晶を、なんとかうまく使う手立ては無いものだろうか。

 山道の途中東屋風の休憩所に女性のお遍路さんが休んでいた。
私が行くと 「〇〇さんですか?」 と女性が声をかけてきた。こんな所に知人が居るわけは無いが
 「エー〇〇ですが」 と答えると
 「川崎の△△さんに聞きました。◯◯さんと言う黒いズボンの人で足がとっても速いお遍路さんがいるって
感心していました。」 川崎の△△さんとは岩本寺で同室だったお遍路さんだ。
その後四万十川で会っただけで一緒に歩いたことは無い。
 「早いことはないけど△△さんとは何所で一緒だったのですか?」
 「足摺岬の手前の宿で一緒になって、二人とも2泊したら宿の人が延光寺まで車のお接待をしてくれたの。
そこで一旦は別々になってけど、昨日また同じ宿になって◯◯さんの話が出たの」
 足摺岬の手前から延光寺までだとおよそ40km程度で、歩けば一日行程になる。
そこを車で来ていながら、今ここに居ると言うことは確かに少し遅い気はする。
だが川崎の方が私が足が速いと言った根拠は、同室だった岩本寺で1番の札所の出発日を教えあった事が
原因なのだろう。
何はともかく他人から 「足が速い」 と褒められた事で、昨日から沈んでいた気分が一編に晴れてしまった。
しかも別れ際には飴のお接待も受けて、気分は高揚し足取りも軽くなった。

 遍路の歩き方と云っても人により様々で、これが正解と云ったものは無いのではないか。
遍路の本には1時間歩いたら10分の休憩。1日の歩行距離は25kmから30kmとか書いてある。

 私は朝歩き出すと1時間でも2時間でも休みたくなるまで連続して歩いてしまう。
もっとも朝から登りの時は30分で休む事もあるが、調子が良ければ午前中に25kmも歩いた時もあった。
ようは計画的に休憩を取るのでなく、歩ければ歩く、疲れたら休むと云った歩き方だ。

もっともこのせいなの午後は疲れがドット出て、休みは増え、速度は落ちてしまう。
ただ午前中に距離を稼いであるので、疲れても気分的には比較的楽な気がする。

1日の歩行距離を故意に30km以下に抑えたのは、最初の3日間だけで、後は 「宿の予約」 でも書いたが、
歩行距離が35km位の宿を探す。無ければ最長で40km位までの伸ばすようにしてきた。
ちなみに今日までで40kmを超えたのは足摺岬の2日間だけです。

 今日の宿は次の41番龍光寺の手前の民宿を予定していたが、昨晩から何度電話をしても応答が無い。
今度公衆電話があったら電話して出なかったら宇和島のビジネスホテルにしようと思っている。

 その公衆電話だが、静岡では携帯電話が増えて公衆電話の需要が減ったのか、どんどん撤去されている。
だが四国ではお遍路さんの為かどうかは分からないが、案外多くて助かる。
遍路に携帯電話は便利でかつ安心だろうが私は嫌いだ。と偏屈な私は思っている。

 遍路に出ると言う事は娑婆とは縁を切ったことではないか。それなのに携帯で常に娑婆と繋がっている
なんて未練たらしい。とは言え私も家に2回電話し3回手紙を出しているのだが。

 公衆電話を見つけ民宿に再度電話をしたが応答が無い。
それではとその民宿の手前にある(手前と言っても7kある)宇和島の町外れのクワホテルに予約を入れた。
料金が心配だったので確認すると、素泊まり5000円とのこと。
これならコンビニで夜と朝のお握りを買っていけば民宿と変わりが無い。
しかもクワホテルなのでお風呂が充実しているだろう。
風呂に何度でも入ることが出来るなんて、こりゃぁ最高だ!。

 宿が予定より7kも近くなったので、このまま行くと2時頃には着いてしまう。
チェックインは3時からだと言うので、時間つぶしに宇和島城に立ち寄った。
今まで物見遊山をしたのは死んだ鯨を見た時と足摺岬の展望台から海を見た時だけだ。
たまにはこんな事も良いだろうと自分を納得させてからの入城だった。

 だが疲れた。
昔もこの宇和島城には入った事があるが、特にこれと言った印象は残っていない。それが今回は天守閣に行くまでの
石垣の階段が高くて大きいことに閉口した。
疲れているから大きく感じるのか、それとも実際に高くて大きいのか分からないが、一歩毎に両手を膝に置き勢いを
つけなければ登れないありさまだった。
せっかく7K手前の宿にしたのに、疲れは減るどころか増えた感じがした。

 だが宇和島城では良い出会いもあった。
お城の中で70歳くらいのご夫婦に 「ご苦労様です」 と声を掛けられた。
ご夫婦は10年前に2人で歩き遍路をしたのが懐かしく、今回は公共の交通機関を利用しながら遍路をしていると言う。
交通手段の無いところは歩いているのだが、疲れるけど楽しいと言っていた。

そうだ!この手があったのだ。
長く歩くのが苦手な妻にもこの方法ならお遍路が出来るかもしれない。
今日の手紙に書いてみよう。

 そうそうこのご夫婦は10年前、あの電話に出なかった民宿に泊まったのだって。
だけどそこで不愉快な目にあったので、貴方は泊まらないで済んで良かったと喜んで(慰めて?)くれた。
何が幸いするか分からないのが遍路旅なのか。

Viewing all articles
Browse latest Browse all 482

Trending Articles



<script src="https://jsc.adskeeper.com/r/s/rssing.com.1596347.js" async> </script>