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Channel: はぐれ遍路のひとりごと
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四国遍路32日目

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                         81番 白峯寺

                     再会(32日目) (2003/4/13)

宿(7:00)→天皇寺(79)→国分寺(80)→白峯寺(81)→根来寺(82)→宿(16:30)  30.3km

 昨日の擬似熱中症も樽生の十分すぎるほどの補給で無事快癒。
朝食もしっかり食べ、久しぶりのゆっくりした出発となった。

80番国分寺までは平らな車道が続き快調なペースで進む。
国分寺は阿波、土佐、伊予、讃岐とそれぞれにあり、ここが最後の国分寺となる。

そう言えば国分寺は昔の国立の寺で、それに相当する神社は一宮神社だと思う。
その一宮神社に気付いたのは阿波の13番大日寺前と、土佐の30番善楽寺の横にあった一宮だ。
ここ讃岐は今日打つ予定の一宮寺の隣の田村神社がそうだろう。

ただ伊予は気がつかなかった。一宮神社も国分寺の付近にあるのではないかと遍路地図を注意して見るが見当たらない。
もしかすると石鎚神社かと思うが確信はもてない。

 今回の遍路では札所を打つのが精一杯で、それ以外は殆ど目もくれなかった。
次回また遍路をする機会があったら、その時は神社やお城、それに景勝地なども訪ねてみたい。
まだ結願も済んでいないのに次回の事考える余裕も出てきた。

だがそんな余裕も国分寺を過ぎ台地の登りになると、すっ飛んでしまった。
疲れて踏ん張りの利かない足には、左程でもないここの登りがきつく、途中幾度も立止まってしまった。
しかしこんな時でも頭の中は余裕で勝手なことを想像する。

 阿波の焼山寺の登りは “遍路転がし” と云う呼び名が付いている。
こんな恐ろしい名前を付けたのは、きっと難所だからだけでなくお遍路の事を思っての事だろう。
最初の山道で疲れた遍路に 「ここは遍路転がしという難所で、此処より酷い所はありませんよ」 と慰めてくれているのではないか。
何故ならそこと同等かそれ以上の難所は幾つもあったが、そんな恐ろしげな名前は付いていない。
弘法大師が名づけたかどうかは知らないが頭の良い人がいたものだ。

 そうこうしているうちに台地の上に着くと、道は軽い起伏のあるなだらかな車道になった。
車道をしばらく行くとまた山道に変わる。ここは短いが打戻りになっていて81番白峰寺のあと82番根来寺に向かう道でもある。
以前27番神峯寺の行って来いの登山口では、人通りのある道なのに遍路のザックが幾つか置いてあるのを見た事がある。
ここは遍路くらいしか通らない山道なのでザックを置いていこうか迷ったが、以前遍路が言った言葉を思い出した。
 「善通寺辺りからお遍路の荷物がよく盗まれる。狙いは納経帳で10万円くらいで買う人がいるらしい」
そんな馬鹿な。その時は酒を飲んでいたので悪い癖が出た。
 「納経帳は一冊3千円として納経代が300円。掛ける90ヶ所で2万7千円。合わせて3万円だ。それが10万円で売れるなら
こんな旨い商売はない。
30冊持って廻れば200万円以上も儲かってしまう。そんな商売は考えられない」 と余計な事を言う。

遍路をしていても理屈っぽい性格は変わらない。話として聞き流せばよいのに酒が入るとそれが出来ない。
そんな場を白けさせるような事を言ったのを思い出した。
それなのに結局ザックは背負ったまま81番に向かうのだった。

 白峰寺を打ち、打戻しを歩いていると前からお遍路さんが来た。
 「ヤーまた会いましたね」 と気軽に声を掛けてきた。顔を見たが思い出さない。
 「ほら足摺岬で通行止め解除を教えた」 思い出した。そうだあの猛スピードの遍路さんだ。
私が18日かかった所を野宿しながら13日で歩いた人だ。それが今頃何故ここに?
 「アレーどうしたのですか、もうとっくに88番へ行っていると思っていたのに」
 「それがあれから雨にあったり色々あって、停滞を何日もしてしまったもので」
雨で停滞? 今まで下痢をした日に翌日歩けるかどうか心配はしたが、それ以外は雨が降ろうが、風が吹こうが、まめが
出来ようが休むなんて想像もしなかった。
それこそ雨にも負けず風にも負けず冬のような寒さにも、夏のような暑さに負けない。それが遍路と思っていた。
なのに雨くらいで停滞! 信じられない。
自分の遍路への思い込みが偏狭すぎるのか分からなくなってしまった。

 ここの台地の風景は中々いい。
山桜が点在して咲いて、辛夷なのか白い大きな花を付けた高い木があちこちに見える。
それに根来寺の境内がまた素晴らしい。
山門を潜ると一度石段を下り、また石段を登るようになっていて、その辺りの木々が今は新芽が萌えだし柔らかい色をしているが、
秋にはきっと素敵な紅葉になるだろう。
こんな所なら妻も喜んで来そうな気もする。一度誘ってみよう。

 今晩の宿の女将は7日目に泊った民宿あずまの女将と同じように開けっぴろげで、ざっくばらんで話しかけやすい。
そこで気になっていた留守宅へのお土産をお願いしてみた。
四国と言えば讃岐饂飩と当初から決めていたが、どこで買えば良いのか分からない。
歩いていて食べるうどん屋は目に付くが、直送してくれる店は分からなかった。
このまま行くと讃岐を通り越し阿波に戻ってしまう。

それに歩いている時に注文したり荷札を書いたりするのは煩わしかった。
女将に頼むと案の定気軽に引き受けてくれて、早速うどん屋に電話をしてくれた。
荷札も住所を教えてくれれば宿で書くと言ってくれたので助かった。これで一件落着して肩の荷が下りた。

だが、お金を払おうとしてまた失敗をした事に気がついた。小銭入れが無い!
納経料や賽銭を出すため硬貨だけを小銭入れに入れておいたのにそれが見当たらない。
今日最後の根来寺では確かにあった。それが今は無い。入っていた金額はたいしたことはないが前日に引き続いての失敗だ。

結願に近づき気持ちが弛んできているのだろうか。明日は気を引き締めていこう。

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